ひまわりの頭がわずかに黒ずんで傾いたまま種子を宿しぬ

テーブルの真ん中に落ちて反射する光は木目を隠しとどまる

樹にあたる風を散らす葉の揺れを集めて幹の伸びてゆく先

雨の後の棕櫚の葉先に透明のまるい空間できあがる

両側の垣根は細き道に沿い曲がり角にてぶつかり合えり

蘭の葉の伸びだしたる先が空気に寄りかかりはじむ

牧草の空へつながる広がりに風の幅なる風のゆきかい

青の間にうすくのびたる陸があり水平線へとつながってゆく

霧雨と車のライトが垂直に染み込む街の交叉点

豆腐屋のラッパの音を引きずって雲は東の緑に消えた

干柿の吊されている軒下に光を吸った影がならんだ

柿の実を残した空に太陽のぽとりと落ちる場所がある

とんぼ空つんと意志もち列をなす夕日に羽をあずけて飛んだ

街灯がほのかな光を生むころに電線ほそく見えなくなりそう

空間に線を引きつつ遠景をなお遠ざけて雨の町

柿の木の枝のたわみの重たさを実の底にとどめておきぬ

夕焼けの空から逃れる雲の群れあすの朝日に吸われるように

山襞に沿って林道ゆく果てに地球のふくらみ薄けむり

群れがもは光のしっぽを引き摺って陽の炸裂に入っていった

湖面には釣り糸たれて透明の波のあたまを釣り上げる

藤蔓は一本ごとの樹を編んでひと塊の森をつくる

不確かに寄せる力というがまな板の豆腐のゆがみの線にある

鷺とんで湖水の光をちりばめた中を割りたる杭にのる

風はカーテンの裾をやわらげて光をそっと導いてゆく

牧草の流れの中へ裸足入れ風の行方を探し続ける

包装紙の折り目を押す指にそい音はたたまれ線となる

上向きの風の太さに乗っかって桜花びら空へ流れる

枝々の交差の空が塞がれて太き幹に緑かたまる

樹の上と下を吹く風ゆさぶりを残して左右に去ってゆきたり

噴水の水持ち上がり重たさを塊のまま落としてしまう

あめんぼう丸い水面 つくりつつ支えるからだを映しておりぬ

両側を吹きぬける風に立ち竦み旗は下よりもがきはじめつ

肘掛けの角にのこる光を椅子の脚は支えておりぬ

積まれたる陶器の数の重圧を抱えた間口の広い店

迫り寄る闇を持ち上げ新たなる力を溜める波の直立

向かい来る風景に去る風景をはめ込んでゆく速度のなかで

まわりつつ風は花びら持ち上げてすいと空気にとけてしまった

シャボン玉 包んだ景色を虹いろに染めて弾き飛ばしてしまう

テーブルの木目模様はやわらかな幅をもちて広がりつぼむ

白壁の西日が当たる日溜まりに影を抑えてとんぼ張りつく

菜の花の隙間の波は反射する光を乗せて引いてゆく

沈む日に姿を映した冬の木は浮きたつ黒をわからずにいる

川幅の太さのままに海となる北上川の長き圧力

水面の光が流れをつくりつつ岸の曲がりにとけてゆきたり

家壁に隣の屋根の影をもつ町並み続く先は夕焼け

柱打つ金属音は消えかかる雲の行方に音を投げかけ

秋風は熱もつ大地の草々をさましながらも整えはじむ

空間にくもの糸が光って風の波を描いて消える