ゆび先にみえぬものがふれるよう風の空に広げてみたる

やさしく影をおさえてしずけさに息とめたまま

なんとなく淡い雪のおちてくるかそけさにいるすなのはま

風に煽られてゆく蜂の口とんがってゆく小春日

影に鈴虫の音のひびき草々のしだれにおちるよ雫

青い藻が一つ泡を吐くときにうすい卵をぬけでてメダカ

打越坂くだる少年しぐれどき挟む輪は回り続ける

待ち遠しくて赤いポストをよじ登る飛び跳ねてまつ春の節分

桃の花のクスと笑うほころびに似てむかし少女の友がいて

水田と竹とみどりのかぜのゆくとおくみたゆめのとんねる