なんのため生きているのかハナミズキ木々をめぐるように咲きぬ

歩き出せ緑の男の一歩から湧き出るようなひとらはなびら

やさしさにこわれてゆけるこころかな氷のなかの花は一輪

切れば切るほどねばりがでるとテレビのなかで刃物がうごく

うちにほとりと落ちてうごかぬことば夕餉おわりて冷えかたまる

夏枯れの森の木の葉を数え踏む子の足もとに数の生まれて

森の奥根の深くのびゆくところ桜一樹のあわきひろがり

杖をつきさだめてゆく足を置きつつ風のなかなる父のとき

三角の赤い帽子をかぶってこびと一歩むこうの未来にひかり

冠毛にゆめの種をはこばせてこの道は夕暮れとなる