へこんでる穴をのぞいていう人の目の奥にある耳のそこ

擦れる音耳のなかに高まりぬ綿棒ひとつ回してみれば

耳なりがとおくの枇杷の葉のすれが風の林をかきまぜる

夕刻の蝉の声々厚雲に押され続けて闇のなか

鼓膜のへこんでとまる　全身を閉ざしてしまう耳の穴

とおくでかなしき音をふるわせるふれえぬもののいる耳の底

空気を内へと入れる穴二つより生まれたる音のとまどい

しんたいをまわしてしまえ耳穴のうごかぬまくのへこみかな

ビードロの空気ふくませまわる音舌さきで触れ合いぬ