［現代短歌名歌鑑賞］ 山崎方代（その１）       呑代もかせがにゃなるめえしつれあいも探さにゃあならないし 山崎方代（歌集『右左口』）     　この作品は、上句と下句の微妙な対応が面白い。上句では「かせがにゃなるめえし」と粋がる。最初「かせがにゃ」と勢いよく、つぎに「なるめえ」とくる。続いて下句、「探さにゃ」というからさらに威勢よくと思えば滞り、「にゃあ」とリズムが変わり、「ならないし」と言葉を整えてゆく。このリズムの崩れにほんのりとした純朴な方代が漂う。 　呑代はなんとかなるさという思いがあるからふざけてしまう。けれど、「つれあい」はそうはいかない。探したいなぁと密かに思い、憧れとして秘めていた、その思いをおどけようとし、本当の気持ちに触れて言葉のリズムが狂った。 　ほんのちいさな言葉の乱れは、作者の心のしずかな吐息を描き出す。言葉は奥底の心に触れて淡くやわらかな音で終わる。整えたリズムに方代は正座して、本当の思いと瞬間に真向かっている。     ＊初出：「方代研究」第34号（2004年2月）

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※参考項目：山崎方代の秀歌 - 一点へ向かう ※参考項目：山崎方代短歌の隠れたキーワード「方代と思い出」

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